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第五回  『1荷2分の1』

 一九七三年頃に社員旅行で韓国旅行を企画したのですが。十数名の社員全員が海外旅行は初めてということで、出発前の楽しさも賑やかなものでした。 パスポートも全員そろえ、数日後は韓国旅行という時に、テレビから数年前の青瓦台における朴大統領暗殺未事件の再報道です。
 社員旅行を延期すべきか決行すべきか。全員が海外旅行を楽しみにしている中で、旅行代理店も、「現在は問題ありません、延期するならキャンセル料が掛かります」とのことです。 「多数の死者が出て、問題が無いことはないだろう」と改めて、認識したのですが、2・3日前のことですからキャンセル料も馬鹿になりません。 結果、決行することにしたのです。平和慣れしている私にとっては、驚きと恐怖を体感する事となりました。
 プサン空港に降り立つと、銃を構えた兵士があちらこちらにいて、観光気分も吹っ飛ばされ、冗舌な私も無口とならざるをえませんでした。 北朝鮮との銃撃戦から既に五年はたっているものの、夜は戒厳令がしかれ、外出禁止で窓から外を眺めると、映画でしか見たことのないシーンが展開されていて、銃を肩に迷彩服を着た兵士が隊列を組んで見廻りをしているのです。 不安の一夜でしたが、日中は昨夜ほどの兵士の緊張感も感じられなく、二・三十年前の日本を思い起こさせる状景を感じつつ、市街地をバスで移動中に事故が発生しました。 肥桶を担いでいた人が転んでしまったのです。あたり一面人糞の臭いがたちこめ、その強烈な臭いはバスの中まで容赦なく襲ってきました。 その当時、韓国ではホテルのトイレは水洗でしたが、それ以外は全て便槽を備えた汲み取り式だったのです。
 私が小学生の頃、我が家も便槽を備えていて時々桶を担いだおじさんが汲み取りに来ていたのを記憶しています。 おじさんに今日は二荷だからと言って母がいくらかのお札を渡しているのです。 我が家から汲み取った二荷を天秤棒で担ぐと、畑の脇にある肥溜めへと運び、農家からもお金をもらう、「肥汲み」なる職業があったのですが、バキュウムカーの出現と人糞から化学肥料への移行が進み、急速に肥を担いだ人も見かけなくなりました。 今にして思えば一荷は二十五l程で、二荷で五十kもの人糞を担いで、坂道を一k近くも運ぶのですから、その体力には驚かされます。
 現在のスーパーにはビニール袋詰めされた野菜が並べられていますが、昔の八百屋さんの軒先には人参や牛蒡大根は葉っぱが付いたままで泥も少々付いている物が並べられていて、買い物客の希望で葉を切り落としていました。 大根葉は食材となっていましたので、大半の主婦が葉も一緒に持ち帰っていましたが、時には大根葉に、黄色く色褪せた新聞紙片が付着しているのです。 当時大便を済ませた後の尻拭き紙として、新聞紙を使用していたのですが、「肥汲みさん」を経て、巡り巡って、家庭に帰ってくる事もあったのです。
 先日、兄弟で酒を酌み交わしていると姉からの帯分数話に花が咲き、臭くも美味しくお酒を頂きました。 「1荷2分の1」がいつからか「1と2分の1」に読み方が変わっているといわれ、半信半疑で翌日、近所の元学校の先生を訪ねて、調べて頂いたのです。 一九八九年七月に帯分数の読み方が記載された書物が出てきて、それを見ると「1と2分の1」と読むと書かれているのです。 私が習ったときの「か」が「と」に変わっているのです。変更された理由は書かれていませんし、もっと以前から変わっていたかも不明でしたが、三十代の息子に尋ねると、「1と2分の1」と読み、読み方が変わったことを確認した次第です。 私なりになぜ変わったのかを推測すると、1荷2荷は人糞を数える単位であり、おかしいとして変更されたのではないだろうか? それが理由ならば残念でなりません。 昭和三十年代までは牛糞や鶏糞に「勝るとも?」劣らない、新聞紙片混じりの人糞を重宝していたことを、後世に伝える手段の一つが消え去ったのです。
何と何、この「と」を使う場合は異種の物を、同時に数量を表したり、同時表現する場合に使われているのが大半ではないでしょうか。 犬と猫・花と木・男と女等、異種又は別性格の物と言った意味を含んでいるものと考えられます。数学の世界で乗除する表記はあっても、異種の物を加減する一括表記を私は知りません。 これを読まれている方はコップ1杯の水とコップ半分の水を「1と2分の1」の読み方に疑問を感じませんか、コップ1杯の水とコップ半分の油は「1と2分の1」で私は理解できるのですが。 「1荷2分の1」を「1加2分の1」と解釈すれば、帯分数も説明が付くのではないでしょうか。整数加える分数が帯分数であると、小学生の頃習った様な定かではない記憶があるのですが。
 中国での帯分数の読み方が気に掛かりますが、何方か理由までお解りの方は教えて頂けないでしょうか。

2010年5月 田辺 父朗